産経新聞「健康ライフ」記事
第1回トクホセミナー
生活習慣病の一次予防とトクホの有効利用をめぐって (1)
 「第一回トクホセミナー」が東京・八重洲のサピアタワーで開かれた。特定健診・保健指導が始まって9ヵ月。生活習慣病のとらえ方、改善の仕方とともに、関心が高まる一方のトクホに対して、予防のサポート役としての役割や有効利用など、熱心な討議が行われた。
3キロ減量で生活習慣病の予防も可能
 トクホ適正使用研究会理事長で共立女子大学家政学部長の井上修二氏は、「トクホと生活習慣病の一次予防、誰が適用対象者か」と題して講演。肥満に基づくメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)では、3kg減量するだけでも生活習慣病のリスクが改善し、病気との境目にある人たちにとっても、トクホの適正利用が健康維持に役立つことなどを指摘した。

 食生活や運動不足、喫煙などの生活習慣因子が発病に深くかかわる病気を生活習慣病と呼び、その代表的な例として2型糖尿病が挙げられるが、遺伝的素因があっても生活習慣が改善できていれば顕在化することはまれだ。しかし自覚症状もないまま放っておくと、網膜症などの2次障害合併症が出て取り返しのつかないことになる。

 日本肥満学会では、BMI(体格指数)25以上を肥満とし、これにより健康障害があれば肥満症として診断される。健康障害には、睡眠時無呼吸症候群・変形性関節症・月経異常・、年齢・喫煙・高血圧・糖尿病などがある。また、肥満を原因として生活習慣病に至らずとも(前生活習慣病)、病気との境目にある症状が今回整理、統合され、減量によって生活習慣病のリスクを減らそうというメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の考え方になっている。

 そしてメタボリックシンドロームの改善には、「3kgの減量で十分生活習慣病のリスクが避けられる」と井上教授は強調する。そこで気をつけなければいけない点は、食事の際、カロリーや摂取量だけ極端に減らすと、「適応」という生体の減量に抵抗する現象が表れるので、運動を加えて、3-6カ月かけて減量し、あと半年体重を維持し続けることが肝心だ。

 トクホに関しては、おなかの調子を整える乳酸菌、血圧によい大豆ペプチド。血糖値には、食物繊維や吸収阻害のα-グルコシダーゼ酵素など、さまざまあるが、今回のメタボ対策の「境界型」、つまり高血圧や糖尿病が疑われる人たちこそ、トクホの適用者と考えるべきである。

 「薬を使うまでもなく、生活習慣の改善で生活習慣病を予防できる人たちに、トクホのような機能のある食品を使うことで正常に戻す手助けとなるのではないか」と井上氏。医療費削減という立場からも、正しい考え方と思われる。本来、人間にはホメオスタシスという体の機能を正常に戻す機能があるが、これが破綻した前生活習慣病の境界型の人、あるいは軽い症状か無症状な生活習慣病の人に、トクホのような機能を持った食品で臨床試験を施すと、きれいに改善の結果が出てきたりする。

 従って、井上氏はトクホ利用にあたって、「これを摂取すれば良くなるというのでなく、しっかり食事・運動療法したうえで境界型や軽い生活習慣病の人たちがトクホ食品を摂取するのが最適であると思う」と語っている。

高血圧、高血糖、脂質異常重なると、血管老化20年早い
 東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授の和田高士氏は、「特定保健指導対象者の選別とトクホ有効利用の具体策」を発表した。

 メタボリックシンドロームの人たちに対し、超音波で動脈硬化を調べたところ、高血糖、高血圧、脂質異常の3つが重なった状態では、血管の老化が20年早いと分かった。一つ一つが軽症の値であっても、複数重なると、相乗的に悪影響を及ぼし、以前から問題となっていた。医療費を見ても、東北大学の研究発表では、病気のない人の医療費が年間2万2,240円なのに対し、1項目でも抱えている人は、2万5,000円、2つは、3万2,000円、3っ、4万2,000円と上がってくる。今回の特定保健指導は、健診の判定結果によって、重症の場合は、受診勧奨。軽症なら、指定の医療機関などで保健指導を受けることになる。

 次に、厚生労働省の決めた受診勧奨の基準に従うと、当施設(新橋健診センター)の人間ドック受診者で見た限り、7割が治療対象者になり、たった3割しか保健指導ができないことになる。例えば、収縮期血圧140以上は、受診勧奨判定値だが、それが1項目でもあれば、医療機関での治療となるが、それでは、医療費削減の目的には、到底合わないことになる。そこで体重の減り具合によってどれだけ血圧が改善されるか3群に分けて分析したところ、初回の収縮期140-159mmHgの人でも、3kgの減量で70%が受診勧奨から脱却し、医療機関に行かなくても済むことが分かった。

 これを踏まえて人間ドック学会では、独自のガイドラインを作成、生活習慣改善の範囲を拡大し、例えば血圧130-159mmHgの範囲であれば、十分改善できることなどを提唱している。「日本人間ドック学会の新しい基準では、保健指導の対象者は、当施設でも31%の見積もりから65%にアップし、これならかなりの人が生活習慣の改善で脱却でき、薬も使わずに、トクホなどを使いながら健康生活を取り戻せるのではないだろうか」と和田氏。

 トクホの使用にあたっては、自分の健診結果や病態に合わせて、トクホの特性に考慮して使い分けする必要があるが、いくつかの注意点がある。たくさん摂取したから効果が上がるものではないし、かえってカロリー過剰でメタボが悪化することも。また、カロリーを減らす場合には、必然的にカルシウムの摂取量も減ってくるのでトクホが役立つかもしれない。

「トクホ使用上の注意」(和田氏より)

  1. 楽して(動かずに)改善しようと思って使うのはダメ
  2. 3倍使用しても、効果は3倍ではない
  3. 多く取ればかえって、カロリーオーバーでメタボの悪化を招く
  4. メタボの場合、まず体重を減らすこと。それなくしてトクホを使っても効果は少ない
  5. 効果は個人差がある(若い人には効くが、高齢者には効かないことも)
  6. カロリーを減らす場合は、「カルシウム等の吸収を高める」
    「骨の健康維持に役立つ」「鉄分を補給する」トクホの使用も考える
  7. EPA(エイコサペンタエン酸)含有の成分が多いトクホは出血しやすいので、内視鏡検査時には医師に相談する

<産経新聞 2008/12/19>
2008年12月更新