産経新聞「健康ライフ」記事
トクホ食生活のサポート役に 〜上手に使って体を調整
 最近、「トクホ」、つまり「特定保健用食品」という言葉を、よく耳にします。4月からスタートした特定健診・保健指導制度においてこの「トクホ」は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)有病群および予備群にとっても、体調を整える食生活のサポート役ともいえます。参入企業が増え、市場規模も拡大するなど「トクホ」への関心が高まっています。食生活が多様化し、さまざまな食品が流通するなか、「トクホ」は、その有効性・安全性などが国の審査を経て、特定の保健機能などの表示が厚生労働省から許可された食品ですが、正しい使用法や活用方法が、十分には知られていないのが現状です。

 そこで、産経新聞では、日本生活習慣病予防協会と協力して、「トクホ適正使用研究会」を立ち上げ、トクホの適切な使い方、活用法などの情報発信をしてまいります。第1回の特集は「トクホ適正使用研究会」の理事長を務める共立女子大学教授の井上修二先生にお話を伺いました。

トクホ(特定保健用食品)とは?
 健康食品といわれる中には、さまざまなものがありますが、「体調を整える」など、身体に対する特定の保健機能を含む食品で、科学的根拠に基づいて有効性などが証明されて、国の審査にも通り、厚生労働省によって保健機能などの表示が許可された食品のことをいいます。
 医師が処方する病気治療の医薬品とは違い、生活習慣病のリスク低減が期待できたり、おなかの調子を整えたり、健康を気にかける人たちのための一助にと開発された食品です。「トクホ」は、平成3年に、世界に先駆けて日本でできた制度で、現在、780製品ほどの食品が許可されています。
 わが国では、食品の中に、栄養以外に機能的に健康に役立つ作用を見いだす研究が盛んで、これらの食品は、以前は「機能性食品」という言葉で総称されていましたが、科学的根拠が確かで厚生労働省が保健機能の表示を許可した食品について「特定保健用食品」と呼称することになりました。保健機能を持つ成分を強化したもので、茶などの飲料や食用油、菓子、乳製品などいろいろあります。

さまざまな効用が期待されると聞いていますが・・・
 特定保健用食品の中には、血圧の上昇を抑えたり、コレステロールの吸収を抑えたり、糖の吸収を遅らせたり、食後の中性脂肪の上昇を抑制したりと、生活習慣病につながるリスク低減が期待できる食品のほかに、おなかの調子を整える食品など、いろいろな保健機能を持った食品が登場しています。利用されている成分は、ポリフェノールとか難消化性糖質、食物繊維、あるいは大豆タンパク質など、さまざまな形態の食品に加えて売り出されています。

「トクホ」の上手な使い方とは?
 食の一番の基本は、栄養素やエネルギーをうまくバランスよく取ることにあります。食品には、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病になりにくくする機能を持つ成分が含まれているものがあります。これらの成分を比較的多く含む「トクホ」ををうまく利用すれば体調を整えて病気のリスク低減につながることが期待できます。
 しかし、「トクホ」は取れば取るほど効果が出るかのように誤解されては困ります。多量に摂取しても効果が増大するというわけではありません。食品だから、大丈夫と思っている方もおられると思いますが、取りすぎて副作用の出ることもあるのです。1日当たりの摂取目安量を守ってください。
 「トクホ」の場合、実際に科学的根拠の裏づけがあるわけですから、提供する側としても、医薬品などと同様、きちっとした注意書きや病態に関する作用機序なども、添付文書だけでなく、ホームぺージやマスコミなどを通じて広く知らせることが必要だと思います。

肥満やメタボリックシンドロームとの関係については?
 肥満とそれを原因とするメタボリックシンドローム対策は減量です。体脂肪つきにくいといった「トクホ」の有効性は明らかになってはいますが、食品ですからそれほど強い機能を持っているわけではありません。本人が脂肪や糖質などエネルギーを取り過ぎていれば、効き目は期待できません。そういう場合は、本人自ら摂取エネルギーを少し減らして運動療法も加えるなどして、まずはメタボ予防の観点から食生活と生活習慣全体を考え直すことが先決です。

 肥満とメタボリックシンドローム対策の失敗は、飽食の生活にかまけて食べ過ぎ、運動もしないまま、肥満から抜け出せないことです。そうなれば、生活習慣病や動脈硬化のリスクが一段と増えることになってしまいます。摂取エネルギーと消費エネルギーの兼ね合いをよく考えて、「トクホ」も活用しながら、1カ月の1kgペースで減量し、3kgの減量を達成することです。

今後、『トクホ適正使用研究会』の方向性として・・・
 基本的には、「トクホ」の正しい知識・正しい使い方を普及させ、一般の人の健康づくりにお役に立てればと思っているわけです。「トクホ」の情報についても、納得のいく信頼性の高い情報を提供することが重要と考えています。健康に関することについて、社会に提言できることがあれば、行っていきたいと思っています。

【プロフィール】井上修二
東京大学医学部卒業。医学博士。肥満と糖尿病の実験的、臨床的研究など内科学が専門分野。現在、共立女子大学教授(家政学部長)で、前日本肥満学会理事長、生活習慣病予防協会・日本臨床生理学会・日本体質医学会理事、日本糖尿病学会功労評議員など。

<産経新聞 2008/05/28>

2008年12月更新