魚の多い食事が日本人の心疾患を減らす
2008年08月14日
 日本人の心疾患の発症がアメリカ人や日系アメリカ人に比べ少ないのは、魚をよく食べているからだという研究成果が米国で発表された。
魚のn-3脂肪酸で心疾患を予防
 この研究は、魚介類からとったn-3脂肪酸とアテローム性動脈硬化症の発症の関連を調べるために、米ピッツバーグ大学(ペンシルベニア州)の関川暁・公衆衛生大学院助教授らが行ったもので、医学誌「米国心臓学会誌」8月5日号に発表された。

 対象となったのは、40歳から49歳の男性で計868人。日本在住の日本人が281人、ハワイ在住の日系アメリカ人が281人、ペンシルバニアからのコーカサス系白人が306人だった。

 心臓病を評価するために、心臓の動脈の冠状動脈の石灰化を、CTスキャナーによるコンピュータ断層撮影で調べた。また、動脈硬化に関連の深いアテローム性動脈硬化症を評価するために、超音波検査により頚動脈の内膜内側の厚さを調べた。

 その結果、日本人は、冠動脈石灰化と頸動脈の肥厚が有意に少なく、アテローム性動脈硬化症が少ないことがあきらかになった。また、白人と日系アメリカ人は同程度であることもわかった。日系アメリカ人は、BMI(肥満指数)、血圧、中性脂肪の平均値がもっとも高く、糖尿病の比率も高かった。

 血液検査では総脂肪量とともに、魚に豊富に含まれる脂肪酸(n-3脂肪酸)を測定した。総脂肪量は3つのグループで差がなかったが、日本で生活する日本人は魚介類からのn-3脂肪酸のレベルが、日系アメリカ人よりも45%、米国白人よりも80%高かった。

 研究者らは、日本人の心疾患のリスクが低いのは遺伝因子では説明できないことで、魚の摂取が多いことに関連していると結論している。EPAやDHAといった二重結合をたくさんもつn-3脂肪酸には、血小板凝集能の阻害、血液の粘稠度を下げるなどのはたらきがある。これが、魚をよく食べると虚血性心疾患を予防できる理由のひとつと考えられている。
魚を週1回から2回食べただけで心疾患の予防を期待できる
魚摂取量と虚血性心疾患
魚摂取量と虚血性心疾患
厚生労働省がん研究助成金による指定研究班「JPHC Study」
 日本でも、魚のn-3脂肪酸摂取と心疾患の発症との関連を調べた研究が行われている。週1回から2回でも魚を食べることで心疾患の発症予防につながることが、厚生労働省研究班の大規模調査で確かめられた。

 研究班は、岩手、秋田、長野、沖縄の4県在住の40歳から59歳の男女約4万人を対象に、1990年から約11年追跡調査を行った。研究開始時とその5年後に実施した食事など生活習慣についてのアンケート調査から、魚を食べる頻度と量、魚の種類を推定した。

 追跡期間中に男女258人が虚血性心疾患を発症した。魚の摂取量により5つのグループに分け比べたところ、魚の摂取量がもっとも少ない1日約20gのグループに比べ、他のグループではいずれも心疾患のリスクが下がっていた。魚を週8回食べているもっとも多いグループでは37%低くなった。

 心電図、血液検査などで診断の確実な心筋梗塞に限ると、リスクの低下傾向はよりはっきりと示された。魚の摂取量がもっとも少ないグループに比べ、もっとも多いグループでは56%低くなった。

 研究者らは「魚による心疾患の予防効果は、魚を週1回から2回(1日あたり30gから60g)食べる程度で期待できるが、食べる回数を増やすとさらに効果が高まる」としている。

関連情報
魚の和風料理はエネルギーを調整しやすい
 日本人の魚の消費量は世界でもトップレベルにあるが、年々減少する傾向にある。水産庁の調査によると、魚介類の国民1人1年あたりの平均消費量は、2001年は40.2kgだったのが、2005年は34.4kgに減少した。
 食生活などのライフスタイルは50年の間に急激に変化し、20?40歳代では脂質エネルギー比が適正とされる比率上限の25%を超えている。こうした食生活の変化が、肥満や2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などのさまざまな生活習慣病の増加に影響している。

Journal of the American College of Cardiology(英文)
厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」
(T)